「シンの髪ってキレイだよねーっ!深い海みたいでとってもイイ」
シューさんが唐突に言ってきた。
「そうですか?ありがとうございます。でもシューさんの髪色も可愛いですよ」
窓からの風がシューさんの髪を梳く。
やはり日に透けるオレンジジュースのような綺麗な色だ。
彼女はへへっと笑って、ソファの上でごろごろした。
「なんでワタシがこの色にしたか分かる?」
「なぜでしょう…元々は違う髪色だったんですか」
シューさんは若干下を向いて考えるようにして、その横顔を一層強い風が撫でた。
「そう…だね、全然別の色だった」
彼女に過去のことを訊くといつもこの表情になる。
過去の顔だ。
「じゃあ、ポップな色だからですか?あるいは柑橘系の果物の色だからとか」
「ブブー違うねえ」
憎たらしい笑顔。
「正解は、朝焼けの色だからでした〜」
「朝焼けですか?」
夕焼けとかでもなく?
「そーだよっ!?ここの朝焼けってとてもキレイなんだ!」
次の日早起きをして、2人で朝焼けを見た。
濃く、しかし限りなく淡く淡く、踊るような泣いているような、青も白も桃も混ざって調和する世界のはじまりの色。
「綺麗だ…」
そう言って吐いた息は白く、空気に透けた。
「えへ、なんとなくいい日になる気がするでしょ。ワタシも無条件に世界は面白いかもって思える、そういう怪盗を目指してるんだ」
「良いですね」
彼女の髪は濃く、でも淡く淡く透ける朝焼け色をしていた。
9/13/2024, 12:24:10 PM