イオリ

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終わりにしよう

 ほんの少しのはずが、予想以上にやってしまった。終わりにしようと何度も思った。でも気になって続けてしまう。

 鏡を見た。

 ちょっと整えるつもりが、眉毛が全部なくなってしまった。どうしよう。


 と、年上の彼女が言ってきた。

 僕は、大爆笑し、

 仁義なき戦い出るの?梅宮辰夫的な。 と言ったら、カミソリをタオルで丁寧に拭きながら、

 お前のも剃ってやろうか、と聞いたこともない低い声で言われました。とても怖かったです。


 で、でもさ、全部剃ったら、自由な形に描けるんでしょ?

 それはそうだけど。

 じゃあ前向きチャンスととらえてさ。どっちにしろもうないんだから、あれこれ言っててもしょうがないし。
 
 まあ、そうね。どうせ1ヶ月ちょっとで生えるし。

 そうそう。前向きにね。

 でもメイク買ってこないと。もう使っちゃって無いから。

 じゃあ買い物行こ。 と言って僕は野球帽を渡した。

 なに?いらないよ帽子。

 いやいや。 僕はニヤニヤをできるだけ抑えながら、

 美容コーナーに梅宮辰夫が来たら、店員さんが怯えちゃうから。 と言った。

 彼女は無言で、棚からおにゅーのカミソリを取り出し、

 やっぱりお前のも剃らなきゃな、と悪魔ボイスを漏らした。

 
 結局、彼女は全眉、僕は罰として片眉だけ剃られた状態で買い物に行った。

 ふたりともちゃんと帽子を被って行きました。

 ああ、僕も眉の描き方勉強しなきゃな。

 

7/15/2024, 10:42:07 PM