パタンッ
読んでいた本を閉じた音が六畳の部屋に響く。この部屋には、一人の少女と、本棚に並ぶ多くの文庫本だけが存在している。特になにかの記念日というわけではない。しかし、彼女はここにある本も、その文字を連ねた著者も、なによりも大切なものだった。
読んでいた本を棚に戻し、しっかりと整列した本の背表紙をなぞる。その目は、本当に愛しい、幸せそうな目をしていた。
「……1000年先も、きっと語り継がれる」
優しげな声でそう告げた彼女は、気づけばいなくなっていた。そこに残るのは、少なくも多くもない。しかし誰かが好きだと云った、そんな言葉を受け続けてきた本たちであった。
窓から受ける光を浴びて、いっとう輝き続ける、そんな本たちであった。
2/4/2024, 12:05:01 AM