「ママ!カエルがいるよ!カエル!」
「わぁ、本当だー」
「カエルさん、こんばんは!」
「カエルさんもこんばんはって言ってるよ」
「私、こっちに引っ越すまでカエルさんは緑色だって思ってたの。ママも?」
「うーん?違う色のもいるって知ってたけど、見るのは初めてだなぁ」
「そっかー。このカエル可愛くないねー」
「そう…そうかなぁ」
「茶色でデコボコでブサイク!」
「うーん。見る人が見たら可愛いと思うんだよ」
「そうかなぁ?ママが言うならそうなのかも。」
「今日ね、幼稚園にカエルさんがいてね!緑色のコレより可愛い方のやつね!私、びっくりしてギャー!ってさけんじゃったの」
「ママでもいきなりのカエルさんならギャーっていっちゃうかも」
「でしょ?なのに、幼稚園のお友達がさ、これだから東京もんは!ってバカにしてきて頭に来ちゃった」
「まぁ、東京からきたのは本当だしね」
「ママだったら怒らない?」
「うーん?どうかなー。怒ってもねぇ」
「そういうママの煮え切らない態度が良くないのよ!」
「…ちょっと、どこでそんなセリフ覚えたの。」
「私はね!怒ったよ!すっごくすっごく怒ってね、カエルさんの近くにいたカタツムリをその子に投げてやった!」
「へぇ。カタツムリ。」
「そう!カタツムリってバイキンがいっぱいいるから触っちゃだめなのに、手掴みで投げた!」
「そうなの?バイキンいるんだ。知らなかったなぁ。ってダメって言われてた事したらダメじゃん」
「だって、私の事、東京もんって馬鹿にしたんだよ?ママに意地悪言ってるおばあちゃんみたいな顔してたもん」
「おばあちゃん、意地悪かなぁ」
「そーだよ!私達のいた東京とこの田んぼの中じゃ知ってることが違うって知らないのかな!口癖みたいに亀の甲より年の功っていう癖にさー。ママのお仕事の凄さ知らないなんて、おばあちゃんは井の中のカワズね」
「だからいつそんな言葉…っていうか上手いこというじゃない」
「ママのデザインする作品はさ。たくさんの人が見て凄い!って言ってくれるしとっても綺麗なのにね」
「うん。ありがとね。ママもこのお仕事好きよ」
「私もママの作品好きー」
「私も将来はデザイナーになる!」
「そうなの?」
「うん!こっそり原案なんてあるんですよ」
「原案…大人の言葉よく聞いてるのね」
「ママと東京に帰れるなら、こっそり教えてあげてもいいよ!」
「東京に帰りたいの?」
「私はどっちでもいい!でもママと一緒にいる!ママははここより東京にいた頃の方が幸せそうだったよ!」
「ママが東京に帰りたいなら教えてあげる」
「うーん。色々大人にも事情があるのよ」
「ほら!そうやってハッキリしないとこ!だからおばあちゃんに付け込まれるんだ!」
「確かにねぇ。ハッキリしなくちゃね。」
「そうそう!その勢いよ!ママ、私はこの悔しさを夜空の星で表すの!」
「ほぉ」
「勝手にキラキラしてて、綺麗だろ?って見せつけてる癖に届かないじゃん?」
「そういう見方もあるわね」
「この土地の人から見たら東京もんってそんなかんじなんじゃない?」
「ほぅ」
「だからさ、東京の人が憧れて手が届かない田舎の星空を見せつけてやろうよ!」
7/5/2023, 2:20:06 PM