今を生きる
異世界に転生しませんか?
天使にも悪魔にも見える男に、そう誘われた。
「貴女の人生つまらないでしょう。次は絶世の美女の、凄腕魔法使いなんてどうです?」
ええと…。私は戸惑った。
「美人の魔法使いになって、異世界で何をすれば良いんですか?」
「それはもう、勇者と一緒に闘ったり、人々を導いたり、王に寵愛されたり」
「それって危険だったり、重い責任があったり、羨望や嫉妬の的になったりしますよね」
「まあ多少は」
「だったらもっとリスクの少ないモブキャラ、例えば村人Aとかになれませんか?」
「はあ?」
男は呆れて行ってしまった。
気づけば自転車で側溝に突っ込んでいて、奇跡的に無傷で起き上がると、最初に見えた景色は青く広がる田んぼだった。
そう、そもそも私はこの世でも村人A
だったっけ。
小さい器と弱い心の、何者でもないその他大勢。
でもそれがダメだとも思わない。
村人Aはただ懸命に、コツコツ今日を生きましょう。
7/21/2025, 8:57:12 AM