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 湿り気のない澄んだ空気を思い切り吸い込む。
 胸の内側がひんやりして気持ちがいい。
 ふうと息を吐きながら肩を落とすと背中のランドセルが揺れた。慌ててベルト部分を、手袋を付けた両手で掴んだ。吐く息はどれも真っ白で、目の前が曇るのが不思議だ。

 これだけ寒くて晴れた日ということは。

 通学路は川沿いの砂利道だ。大急ぎで向かえば道の隅っこが白く輝いていた。
 恐る恐る片足を踏み入れる。

 ザクッ

 足に伝わる感触と、耳に届いた音にニンマリと口角が上がる。
 もう片方の足をその隣に下ろす。

 ザクッ

 先ほどと同じことが繰り返されて笑ってしまった。

 ザクッ ザクッ

 学校に着くまでのほんの数分、ひたすらザクザク鳴る地面を踏んで足を進めた。


 これが「霜が降りる」ということだと知る前の、小学生の頃の話。


『冬晴れ』

1/5/2025, 11:25:17 PM