――自分もそっちに行きたい。
――何故みんな簡単に飛んで行くの?
諦めてからどれくらい経ったのだろうか。
追い越される事にも慣れてきた。
嬉しそうで誇らしげな笑顔。
自分だけが取り残されている。
ふと横を見る。
――ああ、あの子もダメだったんだ。
――仲間だね。
声をかけようと側へ行く。
その子は強い眼差しで歩き始めた。
「待って君、どこへ行くの?」
「あっち側へ行くに決まっているじゃないですか。」
「やめておきな、僕はもう何度も挑戦しているけど無理だったんだ。」
「何度も?」
「そう。みんなと同じようにやっているのに僕はできなかったんだ。だから君も無駄足になるからやめておきな。だって君も僕と同じで――」
「違います。僕にこれは向いていない。だから別の方法で行きます。僕にあるのはこれだけではありませんから。あなたもそうでしょう?」
その子はそう言って進んで行く。
――そうか、これでなくても良かったのか。
浮かび上がる笑顔、軽くなった身体で走り出す。
『飛べない翼』
11/11/2022, 1:54:45 PM