語り部シルヴァ

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『誰かしら?』

「あら...また...」
ドアをノックした音が聞こえてドアを開けると、そこには誰もいない。そこにあったのは木の実や魚が置いてあるだけ。
最近ずっとこんな感じ。
誰かのイタズラの割には木の実や魚は食べれるものだし何よりどれも新鮮でこの前料理に使ったらすごく美味しかった。

友人に聞いてみたけどみんな心当たりがなかった。
不気味だから相談すると村長に言おうよと言われた。
けれど私自身不思議と不気味に感じない。
だってイタズラならもっと腐った木の実や魚を持ってくるだろうし...

ふと思いついた。
ドアの前にクッキーを置いてみることにした。

翌日、またドアをノックする音が聞こえて急いで玄関に向かう。
ドアを開けると、贈り物をくれたお客さんがそこにいて思わず口角が緩む。

「あらあら、可愛いたぬきさん。あなただったのね。」
足に包帯を巻いたたぬきがクッキーを頬張っていた。
山菜を取りに行った時に偶然出会ったたぬきさん。

まさかのたぬきの恩返しだった。

語り部シルヴァ

3/2/2025, 10:20:57 AM