「先生にみつめられると…その、溶けちゃいそう」
恥ずかしそうにでも観念したみたいに目を伏せて自白した彼女のあまりの可愛さと儚さに思わずうっ、と目眩がした。
見る度に美しく成長していく彼女をみると花ざかりの女の子はこうも愛らしいものかとたびたび思う。
これがもっともっと綺麗になる世界なんだから本当におそろしいものである。
「とけちゃう?」
俺がそう問うと、両手を頬に当てた彼女はあつくなった顔を冷ますようにパタパタ仰ぎながらあのね、と内緒話をするみたいに教えてくれた。
「先生と、目が合うとビリビリして、…たえられなくなる、」
ビリビリ……?
俺は目からビームでもだしてるのか、とからかいたくなったが彼女は至って真面目なのでここは大人しく話を聞く。
「じゃあ、貴方の視界に入らないようにすればいいかしら…、?」
「え!そ、そんなのダメ、やだ!!……嫌です」
あんまりに健気で意地らしいから悪戯心が働いて思ってもみないこと、出きっこないことを言ってみる。
すればみるみる焦った彼女はこれまた可愛らしく困ったようにしてきゅっと白衣の裾を掴んだ。
うわ、それすっごく可愛い。
でもあの人に言ったらこんな事で喜ぶとか童貞とかなんとか言われてしまいそうだけど…、本当に可愛い。
「あんまり、見ちゃだめです、……」
「はいはい、」
「あ、でも……適度に見てくれないと……」
「分かったよ」
貴方の反応が面白いから嫌って言うほどみつめてやろうと心に決めたのはまだ彼女が知らない話である。
2024.3.28『みつめられると』
3/28/2024, 1:38:49 PM