霜月 朔(創作)

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君と飛び立つ



君は、傷だらけだった。
…心も、身体も。
それでも、君の瞳は、
一点の曇りも無かった。

そんな君を、救いたかった。
差し出した私の手を、
君はそっと握った。
その温もりを、
愛しいと思った。

君に優しさや安らぎを、
知って欲しいと願う私に、
君はそっと寄り添い、
小さく微笑んだ。

だが。
この残酷な世の中で、
人として生きるには、
君は余りにも、
純粋で、透明過ぎた。

最早、此の世には、
君が君で居られる、
場所はないのかも知れない。

それでも私は、
君の心を護りたいと、
君の笑顔を護りたいと、
君の温もりを護りたいと、
思ってしまうんだ。

だから、私は、
君と飛び立つ。
何も知らない他人は、
現実からの逃避だと言い、
私達を非難するだろう。

だが、それでも構わない。
誰も理解してくれなくとも、
君が微笑んでくれるなら、
私は幸せなんだ。

さあ。
一緒に行こう。
君が傷付く事のない、
此処ではない、
透明な場所へ。

8/22/2025, 8:08:42 AM