椋 muku

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さて、迎えました2025年。私の家の居候のような存在と化したコイツ。私のベッドはもちろんシングルである。それを知った上で私の布団へ潜り込んでくるのである。私の事が心配だのなんだの騒いでいたくせに、家に来た途端に私が世話をするはめになる。だがコイツの幸せそうな寝顔を見るとなんだかんだ全部許してしまう。結局こうして新年もシングルベッドで男2人、めでたく迎えたのである。

「明けましておめでとう」

気持ちよく寝ているコイツにそっと一言呟いたけど、起きる気配は1ミリもない。そのご尊顔をなぞるように触れて顔を近づける。

「…んふ。明けましておめでとう」

ゆっくりと瞼を開けた瞳を細めて照れ笑いをする。

「起きてたの?」

「今起きた」

別にコイツに何かしようとしていた訳じゃない。ただ自分の想いに素直に行動してしまっただけ。それじゃあ言い訳にもならないか。

「…」

珍しく何も言わないコイツは私をじっと見つめて何かを待っているようだった。何処かでは気付いていたが気付かないふりをして意地悪な笑を浮かべた。
するとそのことに気付いたのか私の首に手を回して力強く抱き寄せた。今はまだ抱きしめ返すことしか出来ない…なんて言える訳もなかった。

「…いじわる」

拗ねたように呟いて私を離したコイツの目に涙が溜まっていた。慌てて欠伸をして誤魔化したことも気づいていた。

「朝だけど年越しそば食べるか」

「やったー!じゃあ早く起きよ!でもそれはもう年越したそばになるんじゃね?」

すぐに笑顔になるコイツに今までどれほど甘えてきたことか。新年。一富士二鷹三茄子だなんて初夢のランク付けのようなものがあるけれど、私はコイツと過ごせるだけで十分幸せなのだ。今年もコイツとまた距離が縮まったり離れたりして関係が進展するんだろうな。いつまでも待たせてる訳にもいかないな。いつか、ちゃんと覚悟が出来たら、伝えるから。好きだってな。

題材「新年」

1/1/2025, 2:23:28 PM