耳を澄ますと、あなたの声が聞こえた気がした。
きっと幻聴だ。
だってもう聞こえることはないのだから。
あなたの幻聴を聞くまいと耳を塞ぐと、今度はメッセージの通知音が聞こえた気がした。
私にメッセージをくれるなんて、親かあなたしかいなかったのに。
きっとこれも幻聴だ。
私は震えるはずのない伏せたスマホを見ないふりした。
5/4『耳を澄ますと』
庭に大きなつつじの木があった。
子供の頃、僕とショウちゃんはその中に秘密基地を作った。
お菓子やおもちゃを持ち込んで、大人には見つからないように。
きっと大人たちは知っていたのだろうけど、あえて知らないふりをしてくれていたのだと思う。
つつじの木は春になると花をつけ、僕たちはその花の蜜を吸っていた。
たまに蟻が入り込んでいたりして、小さな秘密基地のなかでパニックになったっけ。
小学生も高学年になると、どちらか一人でも秘密基地に入るのが厳しくなり、最初は秘密のものを持ち込む共有場所になっていたが、その内それもなくなった。
いつからか遊ばなくなり、ショウちゃんとはすれ違っても会話もしなくなった。
それでも、つつじの木の下、あの頃の二人だけの秘密はまだ生きていると思うから、僕は秘密基地に埋まった期限のきた「たいむかぷせる」を未だ取り出せないでいる。
5/3『二人だけの秘密』
世界にひとりぼっちだと思った。
きみが手を差し伸べてくれた。
ただそれだけで。
きみの優しさだけできっと、僕は生きていける。
明日も世界が怖くなくなる。
5/2『優しさだけで、きっと』
色鉛筆のふたを開ける瞬間が好きだ。
多色であればあるほど、開けるときのわくわくが止まらない。
開ければ目に入ってくる様々な色。
色ごとに性格があり、それぞれが自分を使ってと主張してくる。
それらを眺め、「目が合った」色を使う。
一色使い終わると、次は自分だと新たな主張が始まる。
それらを使ってこの塗り絵を完成させていくのだ。
ぼくのカラフルな世界。
5/1『カラフル』
眠っている間だけ、あなたに会える。
夢の中、花畑に佇むあなた。
走っていって抱きつく。
現実ではとてもこんな事出来ない。今は出来ないけれど――。
いつかきっと、夢ではなくなるように。
4/30『楽園』
5/5/2026, 9:50:38 AM