本当は、彼や彼女と性別を分けること自体、
まだ見知らぬ世界だった。
自然界には、性別なんてほぼ無いに等しい。
わたしはわたし、あなたはあなた。
同じ土から生まれたけれども、
それぞれの美しさを持っている。
互いに敬意を払って命を分け与えた。
ありがとうもごめんなさいも言わなくていい。
ただ同じ土の上で生きている、
それだけの付き合いだ。
多様性に満ちた生命が本当の世界だ。
しかし、人間が無能にも科学を片手に、
性別も個体も敬意も命も切断してしまった。
科学の電気で本当の自分の性さえも焼き殺した。
無様な燃えかすで出来た空虚な世界はもう目の前だ。
死に損ないの焼骨がジタバタと暴れている。
独りになりたくないと幼稚に泣き叫んで、
わたしを呑み込もうとする。
わたしはわたし、あなたはあなた。
それだけでもう満足ではないのか、と
わたしは股の血から溢れた火を哀れな灰に点けた。
あらゆる生命の息吹を糧に燃える炎に包まれろ。
(250517 まだ知らない世界)
5/17/2025, 12:53:01 PM