ツユクサ

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お題『手ぶくろ』

私は新美南吉という人の「手ぶくろをかいに」という作品が好きだ。
小学校の時に、大好きな国語の授業で学んだ一つの作品だった。
思えば、これを勉強してから、とても言葉が面白く思えていた気がする。
どこのシーンをとっても、当時の私は「うわあ、ここ、素敵だなあ、好きだなあ」という文章があるが、中でも、

「その足あとには、コバルトのかげがたまりました」

という文章が特に好きだった。

雪は白い。
だから、当時持っていた絵の具のパレットのように感じた。雪をパレットに見立てれば、コバルト色が「たまる」という表現にもぴったりな気がして、当時小学生だった私は非常に感銘を受けた。
夜、雪に足跡がついた、という事実を書くだけで、そんな素敵な表現が、感じ方があるのかと感動した。

さらに、ばらつきはあれどコバルトブルーは青だ。私は、雪が光に照らされた時、確かに濃い青色のイメージがあった。恐らく、深い雪に足を突っ込んで、そこを覗くと微かに青色に見えていたからだと思う。
それを黒い影ではなく、青い影、と表現したことにも、とても驚いた。
私が感じ方を素直なものにしたのはそこからだったように思う。

勿論、小学生の私は散々、感想の言葉が変だと馬鹿にされた。
そんな色のわけが無い。味がするわけが無い。変な感想。

大人になってからも変わらず続けた。

評価がだんだん変わった。
不思議で面白い。そんな感じ方もあるんだね。詩的で、素敵な感想。

私はあの頃の私の感性を大切にできて、良かったように思う。
あの時、「手ぶくろをかいに」と出会えて良かったと、今心の底から思っている。

12/27/2024, 2:09:31 PM