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『夏』

カンカンと照らされる日差しの中、私はそこに立っていた。

蝉時雨を背中に受けながら、額から汗を流す。

カンカンカンカンと踏切の鳴る音が聞こえる。

チリンチリンと風にそよぐ風鈴の音。その音の先で氷をゴリゴリと削る音。かき氷かな。

ここに立ち始めてからどれくらいの時間が経っただろう。額からは汗がたらりタラリと零れる。それをその都度丁寧にハンカチで拭いながら今日も暑い、なんて。

両手で手で握ったカバンをちょっとだけ膝で蹴り上げながら、ピュオ〜っと吹く風を肌で感じた。

「ごめん!おまたせ!!」

そんなところに現れたのは、私の待ち人。
麦わら帽子を被り、派手すぎない色のワンピースをまとった彼女はひまわりを感じさせる笑顔で手を振る。

待ち合わせからは10分も過ぎている。しかも連絡なし。ほんとは会ったら凄く怒ってやろうって気でいたのに大失敗だった。
彼女の笑顔を見た途端私の怒りはすっと収まり、それが愛しさへと進化する。
はあ、私ってばこの笑顔に弱すぎ。

自分の弱さを抱えニコニコと微笑むあなたに私は適う日は来るのだろうか。

6/28/2024, 5:32:11 PM