小鳥遊 桜

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【手ぶくろ】

私が小さい頃…両親は、家に居ない時が多かった。
父親は、朝早くに仕事に行っていたので小さい頃の父親との記憶が殆ど無い。
母親は、何故か、家に居なかった。

だから、遊んでくれるのも、ご飯をつくってくれるのも、お風呂の時間も、寝る時も…全部、近くに住んでいた母方の祖母がしてくれていた。
母方の祖母は、仕事があったけれど…それでも、小さかった私のお世話をしてくれた。
祖母が居なかったら、私は、ここには居ないと思う。
そのぐらい、とても大切な人です。

ある寒い日、母方の祖母が手ぶくろを私につけてくれた。
「外は寒いからね。手ぶくろつけようね。」
って。とても優しい声で。
私の小さい手ぶくろをストーブで暖めて暖かくしてから、ゆっくりつけてくれた。
とても暖かくて、冷たい手がすぐ暖かくなった気がした。

外に出ると、冷たい風が吹いた。
やっぱり、家に居たいな。って思ったその時、祖母が手を優しく繋いでくれた。
「外は、やっぱり寒いね。手を繋いでいようね。」
暖かい手ぶくろが、もっと暖かくなった気がした。

その後、両親には内緒でお菓子を買いに祖母と一緒に買い物に行ったり、近くの公園で少しだけ遊んだ。
とても優しい時間だった。
このままずっとずっと一緒に居たいと思っていた。

そんなことを、思い出した。

12/27/2022, 11:03:36 AM