どすこい

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「ただ君だけ」
その言葉のなんと甘やかで美しいものか。いつも君のことを目で追い、君の表情に一喜一憂する。いつのまにか、私の世界はただ君だけになってしまったようだった。この気持ちが恋なのだと、君のことが好きなのだと、気がついたのは大分後になってからだったように思う。その理由が同性だったからなのか、仲のいい友達だったからなのかはわからない。自分の気持ちに気がついてからは、私の思いはますます募っていった。君と話すだけで1日が輝いて感じられ、君が他の人と話しているのをみてドス黒い何かが心に立ち込めた。そうやって、自分の気持ちをころころと持て余していた時、他の友達が好きな人に告白するのだと言った。それを聞いて、私はどうしたいのだろうかと考えた。このままただ眺めているだけがいいのか、それともこの思いを打ち明けたいのか。もし君が好きな人ができたと言ったら、きっと後悔するだろうとは気がついていた。しばらくの月日が経ち、とうとう意を決してメッセージを打ち込む。「明日、話したいことがあるから放課後に会いたい。」帰ってきたメッセージはいいよ、と。絵文字付きで。教室の前で君を待つ時間は、永遠にも感じられた。心臓がドクンドクンと早鐘を打つ。やっと出てきた君に向かって「好きです。私と付き合ってください。」と勢いに任せて伝える。君は、少し戸惑うようにえぇ、とうなってから、イタズラっぽく笑った。「じゃあ、返事は3年後ね。」そうやって笑う君に恋をしたのに、その時ばかりはそれが憎らしく感じられた。もっと早くしてよと文句を言うと、わかったわかったと言う君とその日はそのまま別れた。不安に感じていた通り、今もまだ返事は返ってこない。冗談だと思われたのだろうか。クラスの子と楽しそうに話している君を見ると、いつもより黒い感情が積もっていく。私には君だけ、なのに。

5/12/2025, 1:55:03 PM