12歳の叫び

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軽いおうと表現あります。でもほんと軽いです。
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ザーザー。
雨の音が、匂いがする。
私の家には紫陽花が咲いている。うーん、綺麗だなあ。
でも、カタツムリは邪魔。私、嫌い。
性格悪いなあ。自分の容姿に触れられたら、嫌になるのに自分は思っちゃうんだもの。
たまーに思うんだよね。
私の顔をじーっと見てくる人はどうしてみてるのかって。
私の場合、可愛い人、イケメンな人を見るけれど、他人はどうなのかなって。
私は、家族以外に可愛いと言われたことも、噂されたこともない。
そして、自分自身で、可愛くないことも把握済み。
じゃあなに?変なものもついてない。
あーそうか。ブスなのか――。
紫陽花に着いた水滴は、水たまりにポチャリと落ちた。
なにそれ、涙みたい。だから嫌いなんだ、雨なんて。なんで泣いてるの?私の顔がブスだから、私が惨めだから、ああ、考えれば、考えるほど嫌いになる。
ずっとずっと、雨なんて降らなければいいんだ。地球が干からびて、茶色になって、ボロボロに消えて、宇宙の星になって、そしてひとつひとつに別れた地球に新しい生命が芽生えて、みんなみんな可愛い女の子、格好良い男の子になって、ひとりひとりが人に大切にされて、みんな幸せ。そんなふうになれば、ハッピーエンド。そうでしょ?私、いい考え。
でも、そんなの妄想に過ぎなくて、理想に過ぎない。
それに、面白みもないよね。
みんな同じ顔なんて、私耐えられない。吐いちゃいそう。おえーって!
「…見てこないでよ」
窓から見えるあじさいを見ていた私を後ろから見ていたカワウソのぬいぐるみ達。
もう2匹もお家に居る。可愛いなあ。私、カワウソみたいになりたいよ。
ほら、おめめ大きいし。
春も、夏も、秋も、冬も、私は嫌いだ。でも、四季のある日本に生まれて、幸せだ。
どんなにわるいわる〜い国になっても、好き。
そんな大好きな国に生まれた上で、国民の特徴にあてはまっていない私は、国籍を日本と言っていいのか。
そこまで考えてしまう人間に育ってしまった。
そんな人間も、自然と、現実味のある小説を書くのが好き。
そして、それを読み返して、作家になった気分に浸る。
でも、毎日書いている小説を世に出すほどの自身もない。
音楽のテストで、緊張して、一言も喋れない奴が、なれるわけないだろう?――。
衒う花火になりたかった。
次は、紫陽花から目を離し、自分の書いた小説に目をやる。
目から、汗が出てきてしまう。
なんでだろうか、最近、暑いもんね。
こんなしょうもない小説で、誰かを救えるのか。
感情が昂りすぎて、汗が出てきた。そうに違いない。
何文字も書いた意味が無いじゃないか。
死後が不安だとか。そんなのどうだっていい。あの時の自分は、考えすぎだ。
ビリッビリっ
部屋に原稿用紙を破る音が響いた。
だって要らないんだもの。
死にたくない、死にたくない、そんな言葉が繰り返される小説に、なにか意味があるのだろうか。
その上題名は、生きたくないとか、小説をバカにしているのか?
でも、その位、意味のわからない方が面白いよね。人間みたいだよ――。
雨が降り始めて、何年経つのかな?
研究科の予想では、昔。太陽が雲から出て、雨の降らない暑い日がある。それが普通の時代だったらしい。
そんなわけないのになあ。だって生まれてからずーっと太陽の出る日なんて見た事ないもの。
きっと、きっと私がこの世に生まれると決まった時点で、神様は悲しんだんだ。
きっと、きっと昔から私がこの世に生まれることが決まっていて、涙を流したはず。
今日も、雨はやまない。ずっとずっと泣いている。


5/25/2024, 1:48:15 PM