—見えない繋がり—
昨日の夕方頃、翔太の担任から電話がかかってきた。
『今日のお昼休みの時間に友達のワタナベユウマ君とケンカをしてしまったみたいで——』
渡辺君は翔太とよく遊んでくれる近所の同級生だ。登下校も共にしており、翔太の親友とも言える子だった。
「どうしてケンカしたの?」
その日の夜、私がそう聞いても答えてはくれなかった。
「いってきます」
次の日の朝、結局翔太は一人で学校に向かった。
翔太は穏やかで、誰かとケンカをしたなんて聞いたことがなかった。初めての出来事でとても不安だった。
私は色々考えながら夕食の準備をしていると、子供達の笑い声が聞こえてきた。
時計を見ると、午後の三時でいつも翔太が帰ってくる時間だった。
インターフォンが鳴り、ドアを開けるといつものニコニコした表情の翔太がそこにいた。
「ただいまー。遊びに行ってくる!」
「誰と?」
「ユウマに決まってんじゃん」
「いってらっしゃい……」
ランドセルを置くとボールを持って外に出て行った。杞憂していた自分が少し可笑しく思えた。
子供の心の境界線は分からないな、と思いながら夕食の準備に戻った。
お題:心の境界線
11/10/2025, 4:33:40 AM