追い風に盗られた思いの塊が
急ぎ足でどこかに行ってしまう。
僕にはどうすることも出来ず諦める。
手紙などまた書けばいいだろう。
だけど、そのまま恋心があの子にバレませんように。
セーラー服が世界で一番似合うあの子に。
…そういえば、あの子の家の向きと風向き同じだな。
いやいや!今は登校中だった…!早く行かないと。
歩く足を早める。
気付いたら、
風が止んで遠い地面にひらひらと手紙が落ちた。
なんだか無性に悲しくなる。
僕もいつか…。
そう考えていたら、遠い所であの子の姿を見つけた。
…見つけてしまった。
あぁ、どうしよう…神様…。
恋が終わって崩れ落ちる音がした。
「ねぇ…この手紙って…もしかして…。」
僕の元にいつの間にか、あの子が。
「…中身…見てない、よね…?」
「……ごめん…。中身が出てて…見えちゃった…。」
「ありがとう。でも…」
…終わった。お願いだから、その先の言葉は。
言わないで。お願い。
彼女の口の動きがゆっくりに見えた。
耳と目は、想定もしなかった情報を受け取った。
「私なんかで…いいの…?」
え。え。
そこには頬を林檎のように染めて落ち着かない様子の、
少女がいた。
「あなただから…。」
掠れ声になってしまった。
「…。な、なんて?」
「あなただからです!僕は…僕は、あなたじゃなきゃ嫌なんです…!優しくて、可愛くて、僕なんかにも構ってくれる…あなたが…。」
今気付く。やばい、必死に喋りすぎた。
ど、どうしよう。
つい口をついて出てしまった。
塞いだってもう遅い。
こ、こんな…恥ずかしい事…!!
僕もあの子も恥ずかしくて、無言の時間が続いた。
キーンコーンカーンコーン…。
学校のチャイムが鳴り響く。
「「や、やばいっ!!遅刻だぁー!!」」
2人とも顔を見合わせる。
そうして、2人で全力で学校まで走った。
いつも通りの道はなぜか、
いつもより色彩が綺麗だった。
まるで、絵画のように。
1/7/2025, 5:44:02 PM