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″スリル満点!!君もぜひ!科学部へ!!″

古ぼけたドアに貼り付けられた紙切れ。
ドアには犬が何かのような噛み跡がある。

少し心配だが、念願の部活活動だ。

深呼吸してドアを開ける。


「ワァ!!踏まないでね!!」

「え??!!?」

びっくりしながらも足元に目をやると、
そこには、地を這うスライム、のようなもの。

ぺちょぺちょと音を立てながら、
私の後ろのドアを目がけて向かって来ている。

液状の体が動かしにくいのか、速度は遅い。


「え、えぇ?!」

「ドア!ドア閉めて!!」


あ?!逃げようとしているのか!!!

脱出を阻止するため、慌ててドアを閉める。


「ナイス!捕まえたぞ〜!」


スライムの努力虚しく、両手で掬い上げられてしまう。
抗議するかのように手のひらで跳ねている。

そんな顔でこっちを見るな…。ごめんって…。


「今度からはノックしてね」
 
「あ、はい。すみません。」

「いーよ。次からよろしくね。」


「散らかってるけど」

先輩らしき人は物が重なったテーブルへと向かい、
ガラスケースの中に先ほどのスライムを閉じ込めた。

飼育している生き物はスライムだけでは無いようで、
足の生えた消しゴムに、目玉のついたキャンディ状の
チーズがガラスケースの中で跳ね回り、暴れていた。

人差し指をガラスにつけ、指をスライドさせてみると、チーズは目の焦点を指に合わせようと目を回している。

面白い。


「…大丈夫?」

「え?」 すっかり夢中になっていた。危ない。

「入部希望ってことなんだよね…?」

「ほら、見ての通りこういう所だからさ。
 逃げ出すことなんてしょっちゅうだし。」


幼い頃児童館で見た、
科学部のお兄さんお姉さんによる粉塵爆発。

あれほどスリルを感じた事はない。
また心臓が飛び出るような驚きがしたい。

この部活で、昔見せてもらった時のように。


「覚悟してきましたんで!!!!」



スリル /

11/12/2022, 5:49:15 PM