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華やかな着物を着た子どもらとすれ違う。
かつて自分も通った道だが、この祝福された子どもと同じ空間にいることに気後れした。

「今日は七五三か…」

散歩がてら神社に行って閑散な空気を味わおうと思ったのに、まさかおめでたい空気を浴びることになるとは。
私は逃げるようにしてその場を去る。

「こんなつもりじゃなかった。う、さむ。」

秋風は吹き荒れて空気を鳴らし、空には木の葉が舞った。

つやつやした木の葉は光を反射し、澄んだ青とくすんだ赤、鮮やかな黄色が視界で目まぐるしく踊る。

「はあ、綺麗…」

降り注いだ木の葉は、私を祝福するかのようだった。

11/15/2023, 12:33:36 AM