かたいなか

Open App

「今日のリアルタイムネタに絡めたハナシをすりゃ、もう、『宝物』は昔プレイしたゲームの思い出に決まってるだろ……」
信じられるか、昔々の初代「かみつく」はノーマル技で、今日25周年迎えた第2世代からやっと幽霊に当たるタイプに変更されたんだぜ。
某所在住物書きは携帯機の電源を入れ、ダウンロード済みのゲームを呼び出した。

音源とドット絵の圧倒的レトロに、25年前を思い出す。コンビニ予約であった。初代からずっと初見プレイの相棒は水タイプだった。
理論も数値稼ぎも知らず純粋に戦って勝って捕まえていた頃の、なんと、懐かしい。
「で、4種類だけじゃなくなったボール、実は数種類、説明通りの性能じゃなかったっつーね」
執筆活動そっちのけで、物書きは画面を見つめ……

――――――

今日は朝から、昔々のゲームソフトとか、ハードの名前とかが、大量にトレンドに上がってくる日だ。
私が生まれる前のやつとか、やっと物心ついたかなって頃のゲームとか、ギリギリ知ってるけどプレイしたことないタイトルもあった。

私と同年代だと思ってたフォロワーさんが「初恋は今日25周年のオカリナだった」って。
「今でも当時のソフトは宝物」って。
ん?(年齢誤認の可能性)
……んん?(実年齢が迷子)

そんなどこぞのゲームの日の、昼休憩。

「先日、11月5日頃に、まだ緑一色だったイチョウの木の画像を見せただろう」
休憩室の、いつものテーブルに座って、いつもどおりお弁当広げて、いつもどおりに職場の先輩とふたりしてランチ食べてたら、
先輩のスマホが、ピロン、DM着信の音を鳴らした。
「アレの続報だとさ。いい具合に色づいたそうだ」
送信元は、先輩の実家のご両親。どこか知らないけど、雪国の田舎だって言ってた。
故郷の隣の隣の隣の、なんかその隣あたりの町に、「昔イタズラで悪さをした狐が化けたもの」って昔話のあるイチョウの大木があって、
どうやら、良い具合に黄色くなったからって、東京に住んでる先輩に画像を送ってきたらしい。

「今頃黄色くなるんだね」
「他のイチョウやモミジは、もうだいぶ、葉を落としているんだがな。このイチョウ、『イタズラ狐の大銀杏』だけ、色づきがとても遅いんだ」
仕組みは分からないが、不思議なものさ。
本当に狐が化けているのかもな。
先輩は呟いて、スマホの画面を見せてくれた。
「わぁ。ヤバい。綺麗」

表示されてたのは、地面スレスレに垂れてるたくさんの枝と、光加減でいろんな黄色をして輝いてるイチョウの葉っぱ、
その枝のひとつを気取って掴む、多分先輩のお母さんと、足元いっぱいに広がる黄色と薄黄緑。
よく見かける並木とは違う、大きい大きい1本のイチョウの本気を、見たような気がした。

「ずっと守られ続けてきた宝物だ」
スマホをスワイプして、別の画像を見せながら、先輩が言った。
「ただ、この町の観光資源、経済効果のある宝物、『千年の大銀杏』は、イタズラ狐より大きくてな」
大木のそばの祠とか、大きなイチョウを撮る小さな観光客の図とか、
スワイプしてスワイプして、ピタリ。
「それも、見るか?」
休憩室の壁時計を見ながら、先輩が聞いてきた。

見る。 条件反射で言いかけたけど、
先輩につられて時計を見たら、昼休憩終了まで残り3分くらいになってた。
「ヤバ!お昼ごはん食べ終わってない!」
「では、見なくて別に構わないな」
「見る!でも食べる!……やっぱ見な……る!」
「どうぞ。どちらでも、お好きな方を」

11/21/2023, 4:17:38 AM