社会人設定
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(ん?あれ、あっちゃんじゃない…?)
田舎から上京してきて今年で2年。
自立も兼ねて1人で寂しく上京してきていた私は、オフィスを出てすぐの歩道橋で中学〜高校と学校が同じで仲良くしていた友達・あっちゃんを見かけた。
彼女とは大学で離れてもう5年ほど疎遠の状態だったが、年賀状のやり取りをする程度まで連絡の頻度が落ちていた。
しかも今は19時を回った頃。
せっかくだし居酒屋にでも誘おう、そしてお互いの知らない話をたくさんしよう。
1人浮きながらもあっちゃんに向かって手を振ろうとした。
すると、あっちは私の方に向かって手を振りだした。
(あ、見えてるのかな…?)
彼女のいる方向に歩みを進める。
「久しぶり─────」
彼女は私の前を掠めるように通りすぎたかと思えば、後ろにいた男性の隣で歩き始める。
手を繋いで。
(私のこと、まだ覚えててくれてるのかな)
彼女にぶつかるように隣を通っても、私は風としてしか触れられない。
彼女の隣はもう空いていないというのに。
死んでも後悔している私は、またこうして歩道橋の上へと戻って行った。
20250505 『すれ違う瞳』
5/5/2025, 8:53:59 AM