南葉ろく

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 生涯において、記憶に刻まれ死ぬまで持ち続け得る思いは、きっと、そう多くない。
 楽しかったこと。嫌だったこと。あらゆる思い出の欠片たちで、構成されるストーリー。そこに不要なものを残すリソースなんて、ちっぽけな脳みそでは到底用意なんてできやしないのだ。
 だから、忘れたいことは忘れよう。そう思う。けれど。
 どうしてだろう。君の顔は。声は。どうにも忘れられないんだ。覚えていたって、苦しいだけなのに。悲しいだけなのに。不思議だな。
 僕は要らないと思っているのに。僕の脳は、君を忘れたくないものだと断じてしまったようで。
 今日も、僕のストーリーの中で。君はあの頃と変わらぬ姿のままで、笑っている。



テーマ「忘れたくても忘れられない」

10/18/2024, 9:22:31 AM