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『まだ見ぬ景色』

私はいつもの自分のこだわりやルーティンを守るのが好きな人間だ。

そうするとスムーズに物事が進む気がするし、何より達成感があり自分自身が安心できるから。

みんな大なり小なり、こだわりを持って自分が納得できる方法で生活しているんだと思う。

でもある日、曲を聞いているとこんな歌詞があった。

『いつもと同じ朝食を食べて、同じ電車に乗り、同じ風景を見ながら通勤していると君と目が合い、同じだった筈の日常に強い光が差した。』という歌詞だった。

目が合っただけで?
ひねくれた自分は、よほどの美男か美女だっただけだろ。と思った。

そんな事を思ったくせに、曲のメロディーが好みなのもあり、自分もそんな感情を知ってみたくなった。

いつも左側に寄って歩く道、いつも選ぶミルクティー、いつも渡る信号、いつも立ち寄る時間。

大した日常を送る自分ではないから、こんな事しか変えられないけれど、いつもと逆を選ぶというルールで一日生活してみることにした。

右側にあったいつも閉まっているように見えたお店も近くを歩けば、実はもう開店していたんだな。

なにやら茶葉が高級だと書いてあるミルクティーを選んでみると、甘味が少なく大人の味わいだ。
自分は甘ったるいのが好きな子供舌なのだと知る。

こっちの信号で渡るとレコード屋の前を通るので、昔の曲が流れていて、気になるので帰ってからこの曲名を調べようと頑張ってメロディーや歌詞を聴きながら信号を渡る。

なんだか寄るのが嫌だなと思っていったお店も行く時間を変えれば、お店の雰囲気も変わり、店員さんに親戚に教えてもらえた。

あまり普段から人の目を見れない自分だけれど、その時に見た新鮮な光景は、あの日聴いた歌詞のように光が差し込んだ気がした。

まだ見ぬ美しい景色だとか、キラキラした世界だとか、そんな大層なものでなくても、自分がほんの少し変われば、いくらでもまだ見ぬ景色が見られるんだと気づいた日もまた、まだ見ぬ景色だ。

1/14/2025, 1:18:05 AM