「これで誰もが大助かり!」
「そうなんですよ! 実はお子さんにもメリットが!」
「かと思いますよね? さらにハッピーな機能が……」
憧れの先輩はとても口達者で、
どんな追及の手も、鮮やかに切り返して味方にする。
あっという間に人だかりができていて、
終わってしまえば歓声の嵐。
それに比べて、僕の周りにはほとんど人がいない。
「地味ですけど、その、ホントは面白くて……」
「い、意外と奥が深いんです」
「幸せにもなれます! た、たぶん」
生きる意味のセールストーク。
ありもしない商品を売りつける力が、
僕にはどうも足りないらしい。
早々にブースを畳んで、僕はぶらりと家路に着く。
これで仕事はおしまい。
あとは自分の好きにさせてもらおう。
4/27/2023, 1:29:53 PM