立花涼夏

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 ひらり、ひらりと桜が流れ落ちる。雲一つない空を舞うその姿は、まるで水彩画のよう。
 三年間過ごした学び舎は、啜り泣く子どもたちの声を一体何度聞いてきたのだろう。何度送り出してきたのだろう。
「大学生になってもさ、絶対また遊ぼうね」
 目を真っ赤に腫らしながら、あーやはブレることなく私を見つめた。
「うん、絶対だよ。こっちに戻ってきたら連絡してね。会いに行くから」
 私の言葉に、あーやはぽろぽろと涙を流しながら頷いた。あーやは県外の大学に進学する。薬剤師になるという夢を叶えるために。きっと忙しくなるだろう。時間もないだろうし、そう簡単に遊びに行ける距離でもない。今日までのように思い立ったらすぐに連絡して遊びに行く、なんてことはこれからできなくなってしまう。
「いつでも遊びに来てね……! それまでに案内できるようにしておくから……!」
「うん、絶対に行くよ」
 あーやの白い手を握って、私は強く頷いた。ずっとペンを握っていた、努力家の手だ。県外に出なければ彼女の夢は叶わない。だと言うのに、私は彼女がずっとこの町にいればいいのになんて考えてしまう。
 初めてできた親友だった。共通の趣味があるわけじゃない。性格だって全然違う。けれど、あーやと話すのは楽しかった。遊ぶのも、一緒にご飯を食べるのも。ずっと、このままでいたかった。
 ぶわりと風が吹いて、桜が一際強く舞った。ひらり、ひらり。今日で着納めのスカートも、風に合わせて揺れている。
 当たり前に享受していた日常を失うのが寂しい。唯一無二の親友と離れ離れになるのが寂しい。そして何より、この引き裂かれるような胸の痛みさえいつか忘れ、ここで過ごした日々がただの思い出となってしまうのが、どうしようもなく寂しいのだ。

 今日、私の青春は息絶える。

お題:ひらり

3/3/2025, 6:07:20 PM