中村

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小さい頃、家族でテーマパークに出かけると、毎回必ず風船を買ってもらっていた。

赤、黄色、青、ピンク、さまざまな色の風船があって、毎度悩みながら父にこの色の風船がいいとねだっていた。

いつもは大切に家まで持ち帰り、萎んでしまうまで部屋に飾っていたのだが、ある日ふと、この風船から手を離したらどこまで飛んでいってしまうのだろうと気になった。

大切な風船が飛ばないようにしっかり握りしめた拳を、小指からゆっくり緩めていく。
最後に人差し指を緩めると、風船は留まってくれることなく私の手を離れていった。

黄色の風船が、青い空に向かって旅立っていく。

いつ止まるかなとずっと見ていたが、風船はどんどん空へ昇っていき、黄色い点となり、やがて見えなくなっていってしまった。

10/15/2022, 5:20:52 AM