好奇心旺盛なのは予言書の中の少女だけではないの。
正式に女王が決まり、平和を取り戻したこの国では密かに英雄の少女への信仰が集まっていった。それは少しずつ勢力を増して、いつしか青薔薇をシンボルに掲げた神聖国を築くまでに至った。
神聖国には青薔薇の女王が存在する。
あくまで女王というのは役職の1つであり、代表者のようなもの。ゆえに王冠は存在しない。
5年に一度、国中の女性にカードが配られて女王が引いたカードと同じものを持っていた人が次の女王になる。一応年齢制限はあるので成人前の女の子が選ばれたらやり直しになる。
神聖国の民は皆、英雄の少女に尊敬と感謝の心をもっている。予言書を書き写したものを聖書としてその心を代々受け継いできているのだ。
もしもまた、この国や世界に危機が訪れたときに再び救いをもたらしてくれることを願って信仰し続ける。
神聖国の成り立ちや在り方はこんな感じだと伝えられているが、実際は少し違う。
英雄の活躍に感激し、いつか自分も英雄の少女のようになりたいと夢見る女の子がいた。同じように英雄を慕う女の子たちを集めて、どうしたら英雄のようになれるか、いつか会えるだろうか、会いたい、次は平和なこの世界を旅してほしい、できれば一緒に、案内してさしあげたい。
安心して過ごせる場所や環境、ずっとこの国にいたいと思ってもらえるようなものを用意しよう。何が起きても英雄を楽しませ、守り、幸せにできる方法はなんだろう。
そんな純粋な願いからはじまった愛が重い国なのである。
「いつか私も、」
初代女王の夢が国を建てた。
予言書の英雄をずっと追いかけている。
人の心を動かす力は、きっと英雄にも負けていない。
青薔薇が象徴とされたのは願掛けのようなもの。
今でもずっと受け継がれているものである。
【題:君の背中を追って】
6/21/2025, 2:43:32 PM