まかろん

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 俺が娘にかけてやれた時間はどれくらいだろうかと考えていると、いつも胸が痛み後悔する。

 俺が仕事人間で家族に自分の時間を割けられなかったことくらい分かっていた。クソみたいな父親だ。もっと、家族で過ごす時間を設けられたらどれほど良かったか。

 だが、時間は戻せない。決められた運命を受け入れて、心の隙間を埋めていくしかない。

 
 俺の覚えている限界の記憶だと、俺とあいつは喫茶店でアフタヌーンティーを嗜んでいた。頬にケーキのクリームをつけた愛らしい顔は今でも鮮明に脳裏に浮かぶ。俺はあの時からあいつの笑った顔を見ていない。


 俺だって自分の娘を愛していなかった訳ではない。でも、あの頃はいつも仕事が忙しいという逃げ文句ばかり吐いていた。仕事と家族を天秤にかけると、いつも仕事が下になっていた。

 

 そんなことを考えながら、俺は泡の薄くなった麦酒に口をつけた。

7/17/2024, 1:20:01 PM