あなたがすき

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雪が降ると音なんてなんにも聞こえない。
昨日なのか今日なのか、明日なのかわからないような真っ白の中で少しずつ青色が滲んでくる。そうすると、ああきちんと時間が過ぎているのだと安心する。
そうして徐々に明らんでくる空の、曇りのない青を見ていると、なんだか、空に放り出されたような気分になる。白と青だけが視界を支配していて、熱いのか冷たいのかわからないほど凍った風のなか、わたしはすこしだけ鳥になる。
そしておはようと囀りたくなる朝の小鳥の気持ちを理解するのだ。小鳥の視点で見た世界の、なんと美しいことだろう。日々を彩るたった少しの風や音でさえ特別に感じられる。冷たい掌を氷のような耳に当てて少しずつ脈打つ鼓動を聞いて、手を離す。もうじき目が眩むような白がやってくる。それまではもうすこしだけ、夢と現実の境目のような、灰色の静かな夜明けを鳥たちと共有していよう。

廻っているのが自分か世界か、走れば昨日に追いつくの

静かな夜明け

2/6/2025, 10:58:19 AM