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この世にはあらゆる写すものがある。
絵、歌、造形、そして「言葉」、星の数程あるこの世界を写すことができる。だが全てを写せるわけでわない。所詮空間とそれを写すのに使うものを別のものなのだ。今、私はその全てを使っても写すことのできない光景を見ている。始まりは仕事を定年で辞めてから少し経った後、昔からの友人から星を見に行かないかという誘いが来た。勿論受けた。
暫く退屈だったし体を動かしたいと思ったからね。
早朝に家を出て集合場所の駅につくともう友人は到着していた。こうして私と友人の2人旅が始まった。
山を歩くのはいつぶりだろう。若かったときはどうともなかった山道は今は荒れ果てた険しい山道に思えた。2人ともども息が切れて山の頂上に着く前に休憩を取った。年はやはりとりたくないものだな。と思った。弁当を食べて少し横になっているともうすっかり日が暮れてしまった。今日はこのまま寝てしまおうか。と友人が言ったのでここで寝た。深夜、私は尿意を感じて外に出た。すると光の玉のようなものがふよふよと私に近づいてきた。何だ!?鬼火か?と私が青い顔をしているとそれは蛍だった。一匹ではない。数百匹に及ぶ群れが美しく儚げな光景を生み出していた。すぐに友人を起こすと戻ってきて写真を撮った。
だがあまり綺麗だとは思わなかった。
幻想的な光景とは写せないものなのだなと思った瞬間である。その後私達はすっかり満足してしまって山を下りてしまった。

お題言葉にできない
この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

4/12/2024, 2:53:23 PM