彼女ができた。急にどうした? と思っていることだろう。だが聞いてほしい。この長い18年という人生、オレにはついぞ彼女ができたことなぞなかったのだ。
それが。……それが!
「急なんだけどさ……今日、お家、行ってもいいかな……? 一人暮らし、なんだよね……?」
一週間前、まさかの彼女からの告白!(前から好きな子! オレだって誰でもいいだなんて失礼な男じゃない)
そして今日、裏庭で昼食を取っていたところ、彼女からの突然の家庭訪問催促!! 違う、お家デート!!(ちょっと馴染みの無い異文化すぎて言葉を間違えた)
人生薔薇色すぎてこわい。もしかしてオレ、ついに、ついに来ちゃいましたか? その……ね? みなまで言わせるな!
放課後、待ち合わせして一緒にオレの家に行こう、という話で落ち着いて彼女とその場から別れた。やばい、オレ今顔面保っているか。心配になりつつ教室に戻ろうと振り向くと、見覚えのあるニヤついた友人トリオ。顔面すごいぞお前等。
「おいおい、お前、急展開すぎんだろ! もう連れ込むわけ!? ヒューッ! 感想聞かせろよな!」
「お前アレだぞ、アレ買って帰ろよアレ! ンへ」
「いやコイツやで? そこまで行かへん行かへん! チロルチョコかけてもええで!」
たいへん下衆である。好き勝手言いやがって。うるせーどっか行けと言っても一向に離れないのでチロルチョコを一人一個ずつ渡していくと各々教室に帰っていった。なんなんだよお前等は。
その後これと言って何事もなく一日を終えて、ついに放課後である。そして、inオレの家。場面が一気に飛んだ? 仕方ないだろう、オレの心情はもうずっとジェットコースター状態で時が加速しまくりなんだ。今日、午後からの授業の記憶マジでない。
「えっと、あの……なんか飲む!?」
「あ、うん。じゃあお願いするね」
緊張が尋常じゃない。喉カッサカサだ。むしろオレがなんか飲まないと死んじゃいそう。飲み物を用意しようと立ち上がった拍子に、膝をテーブルに打ち付けてしまった。なんでこんなところにいるんだテーブル! ウオオ、痛え! そしてオレ最高にダサい! 悶えていると彼女が慌てたように立ち上がった。
「だ、大丈夫!? 痺れるでしょ。そんな慌てなくてもいいよ。……意外におっちょこちょいなんだね。ふふ」
なんだそれ、天使か、天使なのか、そうなんですねえ!? 脳内ファンファーレが鳴りまくる。オレの彼女可愛いすぎか? ちょっとびっくりしちゃったな。
「だ、大丈夫! ごめん、ありがと、あ」
「え? わっ」
少し蹌踉めいてしまった。断じてわざとじゃない。本当にちょっと体が揺れた程度だったけど、わりと今、オレたちの距離は近かったものだから、軽く体がぶつかってしまった。顔が近い。……エッ!? これ、そういうやつ!? オレわかんない! 何もかもがハジメテだもの!
彼女も頬をうっすら赤く染めつつ(可愛さの限界値突破してる)離れようとしないし、オレはなんか熱いし、頭から湯気が出そう。しちゃっていいのか、こう、ブチュッと。いいのか!? それにしたって心臓がうるさすぎる。ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドッ、ドシン! ……あ?
心臓の爆音じゃない別の爆音が明らかにしたぞ今。外から? 彼女も聞こえたようで、二人して首を傾げ、そして窓を見た。何もない。無いけど、近付いて、窓を開けてみる。下を覗くと、見覚えのある顔が三つ。
一様に、ヤベェという顔をしながら三人同時に口を開いた。
「……お、お邪魔してま〜す……」
「邪魔すんなら帰ってェ!!!??」
テーマ「突然の君の訪問。」
8/28/2024, 11:21:39 AM