【13,お題:終点】
「悠人、これは...約束...だから」
焼けたゴムとアスファルトの不快な匂い
周りの喧騒に紛れて、サイレンの音が聞こえる
でも、そんな騒がしさすら恐怖で塗りつぶされて感じない
「ッおれの...夢、...叶えてね...」
徐々に温度が抜けていく、顔が青白くて声が震えている
何とか声をだし「うん」と答えると、兄はふっと微笑んだ。
「ッごめん...ありがと...ね」
「...ッうん...」
それっきり兄は喋らなくなった。
背中に回したてが手がじっとりと濡れていて、押さえても滲み出るそれが
兄を向こう側に連れていってしまうようで怖かった。
その後すぐに救急車が到着したが
一時間後、亡くなったと伝えられた。
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俺は今、兄の夢であったアイドルをやっている。
正直人前に立つのは苦手だし、ましてや歌って踊るなんて僕に...俺にとってはかなりの苦痛だった。
でもこれが兄ちゃんの夢なら、自分の歌と踊りで皆を笑顔にするのが兄ちゃんの夢なら
俺はやり遂げて見せるよ。
だから、俺の人生の終点駅で待ってて
ちゃんと叶えたよって報告するまで、まだ時間がかかりそうなんだ
終点でまた合えたら、よくやったねって褒めてほしい。
じゃあそれまで、またね兄ちゃん。
8/10/2023, 12:28:12 PM