望月

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※若干のグロテスクな描写がありますので、ご理解の上ご覧下さい。

《こんな夢を見た》

 私の意志とは関係なく動く四肢が、貴方を喰らってしまう。
 けれど、何故かそれはわかっているのに私には貴方を顔しか見えていない。
 いや、顔以外を見ないようにしているのだろう。
 だから、私の視界の端に映る紅以外は、涙を流す貴方の顔しか見えない。
「……ごめ……大丈っ夫……だか、ら……」
 何故泣いているのだろう。
 何故謝るのだろう、わからない。
 断片的な世界を見る。
 視点がブレて、私が私でないような感覚に陥って、それでもなお。
 体は動き続けている。
 千切って、爪を立てて、抉って、爪を立てる。
 見ていなくとも感覚で伝わってくる肉の感触が、私に自然と言葉を紡がせる。
「……もう嫌、お願い……止めて……殺して……!」
 懇願さえも私の体を止めるに値しないのか。
 狂って、狂って、叫んで——。

 目を開けると、そこは真っ暗だった。
 血なまぐさい匂いが鼻を突く。
 視線を落とすとそこには、大好きな貴方の瞳があった。

 ——夢じゃ、なかったの?

1/24/2024, 9:51:24 AM