(※二次創作)(ひなまつり)
「今日から3月か……」
地主さんから貰ったカレンダーは、この村での年間行事が書かれた優れモノで、これのお蔭で僕はつつじが咲く正確なタイミングや、正しい年末年始の過ごし方、それぞれの時期を楽しむ食べ物について知ることが出来ていた。ある程度家の手入れも終わり、困っている村のあれこれも解決した今、正直、僕は時間を持て余していた。よって、そのカレンダーを毎日朝起きて見るのが一つの楽しみになっていたわけだ。
「桃の節句……あ」
僕はあることを思い出して、ごそごそと押し入れの隅を探った。
「あったあった、ひな壇!」
以前、村の優しい女性から、いつものお礼にと譲り受けたものだ。子供さんたちも外に出て、渡しても家が狭いから困ると言われるしと僕に白羽の矢が立った。僕は、貰えるものなら何でもありがたく受け取るタイプなのだ。
女の子のお祭りをするのは、男の僕には似合わない気もするけど、ま、今更だろう。大体気楽な一人暮らし、誰に気兼ねすることもない。
ひな壇は組み立て式のようだ。しばらく考えて、床の間に飾ることにした。というか、ここしか置き場はないし。ひな壇を組むのは初めてだが、思ったより簡単に組み上がった。
「あとはお内裏様とお雛様か」
僕は箱の中に入っていた二人を取り出すと、服の裾でぱっぱっと払ってやった。なんだかわくわくしてくるし、人形も嬉しそう。
「って、なんでキミが」
振り返ったひな壇には、いつの間にか猫がいて、当然のように居座っている。どいてくれるよう頼んだが、どこ吹く風で、僕はお内裏様の場所に二人分並べた。ちょっとぎゅうぎゅうだが、完成だ。立派な出来にいよいよ気分は上がり、小学校の頃に流行っていた替え歌が蘇る。
「灯りをつけましょ爆弾に〜……あ、続き忘れた」
なんだかしまらないなぁ。
3/4/2024, 10:04:56 AM