猫宮さと

Open App

《夜景》

保全しておきます。

下に、昨日保全し損ねていたものを載せておきます。
読んでいただけると嬉しいです。

==========

《花畑》

晴れた日の午後。
執務室のドアのノックに応えて出ていた彼が、頭を抱えて戻って来た。

「どうしたんですか?」

彼が態度に出している時はそれなりに話して大丈夫な内容がほとんどなので聞いてみると、

「いえ、先程重要書類を持ち出して脱走を図った兵士見習いを捕らえたそうなのですが。」

聞けば、その兵士見習いは書類と共に白昼堂々逃走をしたらしく、今まで捕物劇が繰り広げられていたとか。
いわゆるスパイなのかな。
それにしては盗んだのは機密ではなく重要書類だし、逃走方法は雑だし、なんだかなぁ。

なんて考えていると、彼が更に事の顛末を話してくれた。

「その見習いなのですが、民家の庭に踏み込んだ挙げ句にリコリスの花畑で顔面から派手に転倒してしまいまして。」

リコリス。
マメ科のリコリスもあるけれど、この季節の花畑といえば。

「…まさか葉のないリコリスですか?」

「そのまさかです。」

あー! まさかの彼岸花の方!
花や茎にもアルカロイドが含まれる、あっちですか!

「おかげで民家への補償もですが、よりにもよってその見習いは肌が弱かったらしく、折れた茎の汁が触れた顔の皮膚が齧れてしまって治療しながら尋問する羽目になっていると。」

彼は困ったというより、呆れてたのね…。
まあ、その気持ちは分かるなぁ。
人様の庭に踏み込んで花畑を踏み荒らした上に転倒して汁で肌を齧らせるとか、そのお家の方は災難でしかない。
本当に早くその見習い兵士が捕まって、よかった。

「この後は尋問内容の確認と見習いの処遇、被害を与えた民家への対応が入ることになりました。」

少し萎れた感じの彼に、私は心から

「お疲れさまです。待ってますね。」

と伝えると、彼は

「ありがとうございます。手早く終わらせてきますよ。」

と、ふんわり笑って答えてくれた。
スムーズに彼の業務が進みますように。

皆さん、綺麗な花でも触るなら気を付けてくださいね。

9/19/2024, 2:19:00 AM