NoName

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 好きな人ができた。その人のタイプに近づくため自分を殺し、新たな自分へと生まれ変わらなければいけない。ありのままの自分を愛してくれる人など、クレオパトラでもみつけることが難しいのだ。愛してほしければそうならなければならない。
 長年手入れしてきた艶のある黒髪は肩くらいまでバッサリ切った。
 おしゃべりな口も比較的、開くことが少なくなった。
 暗い性格を無理矢理にでも明るくした。
 毎日毎日、鏡を見て欠点を探した。
 チャームポイントはいつからかコンプレックスに変わり、隠すようになった。

そんな変わった私を見て離れていった人も、逆に来るようになった人もいる。
 今がどんなに苦しくても、貴方に愛されるのなら今を捨ててもいいの。それくらい貴方が好きなの。

 「最近変だよ?前の君の方が良かった。」

…私の恋はあっけなく終わった。
全て貴方のため、貴方のためなのに。
変じゃないよ?ほら貴方の好きな人になってるでしょ?

前の自分など、とっくに忘れてしまった。
一つずつ、壊れていった。
今思えば、貴方を好きになったことが間違いだったのかもしれない。誰か早く気づいて欲しかった。

前の自分になれば愛してくれるの?
今までの言葉はなんだったの?
無責任じゃないの?
一年後も一年前も私は私だよ?

私は私を無くした。

5/13/2026, 2:27:11 PM