John Doe(短編小説)

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工場のベルトコンベアをすべて停止する
もう、私のために彼らが働く必要はないから
「おやすみなさい、お疲れ様でした」
電源を落として、彼らに永遠の別れを告げる
間もなく巨大な工場に静寂が訪れる
唯一の明かりは非常灯だけ
でも、それももうじき消えるはず

私の身体は無数の鳥になっていく
痛みや苦しみは存在しない
あるのは、恍惚だけ
私はすべてを超越する
そしてこの大宇宙を漂い続けるんだ
後悔なんかしていない
忌々しい過去と対峙する必要もない

世界が私を受け入れてくれる
すべてが私を慰めてくれる
ベンゾジアゼピンで繋ぎ止めていた糸が切れる
私をいたぶっていた惑星が小さくなる
聞こえてくる、静謐なメロディー
神様がいる場所に近い所へ行く
酸素も二酸化炭素もない所へ

古びた私の肉体は鳥たちが啄んでいった
もう、何も怖くない
もう、何も悲しくない
もう、これ以上死ぬこともない
私は新しい世界で永遠に生きていくのだから…

8/12/2023, 11:22:19 AM