「未来を知りたいかと聞かれたら」
何かに導かれるように入っていった路地の奥。
小汚い雑貨屋の店先。木の箱の上に並べてある古い鍵が気になった。
「あら少年。その鍵が気になるの?」
肌の露出多めの服を着た年齢不詳の女性が微笑んでいる。
「あ、いや……」
「その鍵であの扉を開くと、未来を見ることが出来るのよ」
そう言って女性は店の奥を手で示した。
「……はぁ」
「信じてないわね」
いや、どう考えても怪しいだろこれ。
そういえば、前に兄貴がこの辺で変な体験したって言ってたな。
古本屋に色っぺーおねーちゃんがいて「それは未来がわかる本よ」とか言われたとか……
「未来っすか。そんなん知ったら面白くなくね?」
「あら、少年はそういう考えの持ち主なのね。残念」
ちっとも残念そうな表情をしていない女性に疑問を抱く。
なんか、嫌だな……
ぺこりとお辞儀をし、女性に背を向ける。
本能的な恐怖と嫌悪感が全身を駆け巡っているためか、自然と早足になった。
「残念だわ……」
女性の声に思わず振り返る。
あったはずの怪しげな店も女性の姿も、そこにはなかった。
────未来への鍵
1/11/2025, 8:35:18 AM