中学の同窓会の帰り、十数年ぶりに幼馴染と地元の磯に訪れた。幼い頃はよくここで彼女とちいさなカニを探したものだ。水際で平たい石を見つけては、持ち上げて裏返す。カニ探しはかつての僕らの心を完璧に掴んだ。あの楽しさは今でも忘れられない。
幼馴染が僕に微笑んで言う。
「そうちゃん、カニ、探す?」「うん。」
僕らはカニを探した。黙々と探した。あっという間に日が暮れて、僕らは立ち上がった。
「そろそろ行こっか。」「うん。」「楽しかったでしょ。」「まあね。」
ふふふ。彼女が微笑む。「ね、楽しかったでしょ。」
僕は確かに楽しかったので頷いた。昔から、そうちゃんって顔に出やすいからさ。彼女がそう言う。僕は昔から表情があまり動かず、皆からは何考えてるか分からない、と言われることが多かった。
だだし、唯一無二な僕の幼馴染には、僕の心を裏返して奥を覗き見ることが可能だということだ。
8/22/2024, 12:00:04 PM