俺と貴女の物語は、恋物語などと呼べるような、甘く素敵な代物ではありませんでした。今でもあの時の自分の狼藉を思い出すと、貴女への申し訳なさで胸が苦しくなります。
もう二度と、貴女に言葉を伝えられることはないと覚悟して、俺は貴女の守りに入りました。ですから、今こうして俺の言葉を書き取ってもらえているのが、本当に夢のようなのです。
そう考えると、駄目ですね、欲が出ます。
もしかしたらまた、貴女が微笑みながら俺を見つめ、優しく俺の名を呼び、そっと触れてくださるかもしれない。ともすると、恋仲になどなれやしないだろうか。言葉が届くのだから、そういうこともあるやもしれない。ほんの束の間の愛の関係しか結べなかった俺に、また機会が与えられるのではないか。
そんなことを考えて、我欲に溺れてはいけないとは分かっています。
それでも貴女を恋慕する気持ちが五百年ぶりに募ってゆくのを、俺は止められずにいます。
5/18/2024, 1:46:25 PM