百加

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冬のはじまり


一、朝、布団から出られなくなる。
二、長袖のヒートテックを着始める。
三、玄関から外に出れば、朝の冷たい空気に吐く息がほのかに白く見えた。冬がやって来たね。

四、会社の帰り、駅から家に歩き始めると指先が冷たくなってくる。まだ手袋を使うほどじゃないと、ポケットに手を入れる。
 今、あなたと手を繋げればいいのにな、なんて思いながら。



#103

昨日は出先にスマホを忘れて間に合いませんでしたので、まとめて投稿します。





泣かないで


 薄暗くなってから近所の公園に呼び出された。親に言い訳をして急いで向かうと、公園のベンチに従姉妹の姉ちゃんが俯いて座っている。あー、またか。ため息を一つついて、思った通りを声に出した。

「また、振られたの?」
「違う! 振ったの! 二股されてたなんて……!」

 オレの遠慮のない言葉に、勢いよく顔を上げた姉ちゃんは噛み付くように言った。
 まだまだ元気があるみたいだな。

「あいつ、あんまり感じ良くないって、オレ言わなかったっけ?」
「言ったけど……。優しい人だと思ったんだもの!」

 四歳年上の従姉妹は、いつになったらオレの気持ちに気づいてくれるんだろう。
 ずっと子ども扱いするくせに、こういう時は呼び出すなんてズルいよな。

「泣かないでよ。そんなやつと別れて正解じゃん」
 自販機で買った温かいカフェオレ缶を渡して、隣に座った。姉ちゃんは鼻をすすりながら、ありがと、と呟く。白い両手が温かいカフェオレ缶を包み込んで、その手に涙が落ちた。

 だから言ったのに。
 腹だたしいけど、目と鼻を赤くして大粒の涙を零してる姿を見れば、やっぱり胸が痛むんだよ。オレならこんなに泣かせたりしない。

 でも、泣くならオレの前だけにして。
 早く大人になりたい。伸ばした手でそっと小さな背中を撫でた。



#104

12/1/2023, 4:24:52 AM