【夜景】
有田は生前、とんでもない性癖を持っていた
普段は真面目で心優しく仕事熱心な人柄だったが、
性癖を満たした後、自宅の高級マンションから
夜景を見下ろす彼はとても同じ人間とは思えなかった
さて、彼の死後では彼を天国に導くか、地獄に導くか
激しい議論が行われていた
議論の末、性癖のみを地獄に導くことが決まったが
そこである大きな問題にぶつかった
それは、性癖は脳なのか陰茎なのかという問題だった
脳側の意見としては、
「性癖はその人の心理や本質を表すものであるから
性的嗜好は脳が行う普段の思考が決めたに違いない」
陰茎側の意見としては、
「彼奴の性癖は陰茎が本能的に独自に考え、
それを脳が受け取っただけである為脳は無実である」
この対立は天界を揺るがす程激しかった為、
神々も関わったがそれでも尚、何の発展も無かった
だが、脳と陰茎の証言からある事実が判明した
脳と陰茎は共犯関係だったということだ
脳と陰茎は最初は抵抗したが、直ぐに地獄に送られた
そして、有田本人は天国に導かれて神々からは
彼の住んでいた大好きな高級マンションも送られた
しかし、有田は大好きなあの夜景を見下ろした途端、
苦しそうな呼吸と共に涙を流したのだ
性癖を失った有田にとっては天国も地獄だった
9/18/2023, 11:53:08 AM