こんな夢を見た。私は行列に並んでいる。何の行列なのか分からないが、白装束を着て皆ゆらゆらと行列が進むのを待っている。
「…もしかして、ここって」
嫌な予感がして周りを見ると、頭上に抜けるような青空、自分の足元にはふわふわの白い雲。これは、いわゆる死後の世界ではないのか。
「え、私死んだの?いつの間に…」
行列が前に進み、引っ張られるように前に進む。
「何で死んだんだろう…。全然、覚えがないや」
でも、まだ死ぬつもりはなかったはずだ。だから、自殺ではない。きっと、突発的な事故や病気だろう。
「早かったなあ、まだやりたいことあったのに」
先ほどから独り言を言っているが、誰も意に介した様子はない。まるで聞こえてないみたいに。どんどん行列は前に進み、行列の先が見えてきた。
「あれ…ミキサーかな…?」
行列の先に、大きな真っ白なミキサーが鎮座していた。
「何で、ミキサー?」
時折、機械の振動音が聞こえる。透明な容器の中身はよく分からない。内側に何かが飛び散った跡があるが、形容し難い色をしていた。
「何あれ、ミキサーを使うなんて…搾りたてジュースでも配ってるのかな」
だとしても、あの形容し難い色のジュースは流石に飲めない。勧められても断ろう。行列は進んでいき、ミキサーの前から五番目に近づいた。ミキサーの近くには、全身真っ白な人たちが立っていた。髪も肌も服も、真っ白で覆われている。唯一、目の虹彩だけは血のような赤色をしていた。
「はい、次の方。あのはしごを登っていってください」
白い帽子を被った白い人に促され、最前列の白装束の男はふらふらとミキサーについたはしごを登っていく。そして一番上にたどり着くとふわりと飛び降り、ミキサーの容器の中に落ちていった。ミキサーのフタは閉まり、白い人はミキサーのスイッチを入れた。途端にゴリゴリギュリギュリと嫌な音を立て、男はミキサーの中でバラバラになった。バラバラになってもミキサーは止まらず、男だったものを細かくしていく。そして完全に液体になると、白い人はまた別のスイッチを押した。すると、今度は容器の中がぐるぐると回り始めた。ちょうど、洗濯機の脱水のようだった。中の液体はミキサーに繋がれたホースから、横のドラム缶にびちゃびちゃと落ちていく。白い人がミキサーを止めると、他の白い人たちがミキサーを開け、中の物を取り出した。取り出されたものは、赤黒くて肉塊のようだった。
「…これは、駄目です。また、悪人でしたね」
周りの白い人たちはうんうんと頷くと、ドラム缶に投げ込んだ。
「次の方、はしごへ」
そう声を掛けると、次に並んだ女が無言ではしごを登っていく。ミキサーにかけられ、また赤黒い塊が出てくる。白い人たちは首を横に振り、ドラム缶に投げ込む。それの繰り返しで、ついに私の番が来てしまった。
「次の方、はしごへどうぞ」
行きたくない。もう死んでいるとしても、体がバラバラにされるなんて嫌だ。
「次の方?」
白い人が一人近づいてきた。
「あなたの番ですよ。はしごへ登り、あの中へ」
何とか誤魔化そう。
「す、すみません。私、高所恐怖症で…。高いところに登るのを想像しただけで、足が竦んじゃって」
そう答えると帽子の白い人は首を傾げた。だがすぐに合点がいったのか、天使を思わせるような微笑みを浮かべた。
「自分で登るのが怖いんですね。ワタクシたちがあなたを抱えていきましょう」
帽子の白い人は手を差し伸べる。手を取ると他の白い人たちが体を掴み、浮かび始めた。
「あなたは善人でしょうか、悪人でしょうか。善人なら、ワタクシたちの仲間になれるのですが」
どうやら、仲間を探しているらしい。話しているうちにはしごの一番上についてしまった。
「さあここまで来れば、あとは飛び込むだけです」
その時ゴボゴボとドラム缶が泡立ち、ホースから液体がミキサーの中へ逆流し始めた。
「しまった!まだ意識があったか!」
白い人たちが逃げようとした瞬間、液体が大きな手のように持ち上がった。液体は白い人たちを一人残らず呑み込み、ミキサーの中へ沈んだ。私は慌ててミキサーのフタを閉め、大急ぎではしごを降りた。スイッチを適当に押すと、ミキサーは起動し白い人たちと液体は混ざり始めた。そうして液体がドラム缶に排出され、出てきた塊は赤黒い塊ばかりだった。
4/27/2026, 9:38:04 AM