鍵のかかる箱に、日記を入れていた。
それが小さかった頃の、わたしの秘密。
アンネ・フランクの日記に影響されて、居もしない親友に宛てて日々を綴っていた。
毎日、お酒を飲んで、兄を怒鳴り殴る父。
毎日毎日、わたしの目の前で、3時間は続く。
母は素知らぬ顔で部屋から消えている。
わたしは兄が殴られなかった日を記録しようとして、1日もないことに気がついた。
何年続いただろう。本当に1日も途切れなかった。
自分が殴られるより恐ろしかった。
目の前で兄が暴力を振るわれ続けるのは。
きょうはつらかったけれど、あしたはきっときょうよりひどいから、きょうはまだ、しあわせ。
呪文のように同じ言葉が並ぶ日記。
暴力が兄からわたしに向いた頃、わたしは、秘密の箱ごと、日記帳を庭で焼いた。
【秘密の箱】
10/24/2025, 2:03:47 PM