夫婦
週末のまとめ買いの帰り、目の前を黒い車が走っている。ナンバープレートが目に入る。
まただ、1122。いい夫婦の日。
「最近はちょっと減った気がするけど、やっぱりあのナンバープレート多いよねえ」
前を見ながら、隣の運転席に話しかけた。
「新婚の時に車買った人だろなあ」
「あれ、呼び出しの時とか困んないのかな。私、四桁しか覚えてないし」
他愛のない会話。
平凡な日常。
大事な娘。
それは私が結婚で得たもの。
以前、今はもう亡くなった伯父に、夫はどんな人か尋ねられたことがある。その時、頭に浮かんだことはたくさんあったけれど、結局私は「おもしろい人です……」としか答えられなかった。伯父は笑った。
「それはいいね。それが一番だよ」
商売上手で苦労人で、口喧しい伯父が、やけに嬉しそうに言ってくれた。時々思い出してはその言葉に力づけてもらっている。
いろいろあったけど、結婚は悪くないと思うようになった。だから来世まで一緒に、とは思わないけれど、この世では最後までよろしく。
娘に伝えるなら、経済的な自立は大事だと言っておきたい。
いつでも離れられるからこそ、もう少し頑張ってみようと私は思えたし、少なくとも私たちは対等でいられた気がする。
#96
11/23/2023, 7:02:39 AM