―【 忘れられない、いつまでも。 】―
…
深夜の海に反射する命の数ある星が、大きな夜空に浮かんでいる。
「……結局、俺だけですね。」
想いの灯火は月明かりに照らされ見えなくなったらしい。
琥珀色の彼の目は、もう自分の視界では捉えることができなくなってしまいました。
もちろん彼は殺していません。【野次馬に殺された】と。
俺は他人なので断言も出来ません。
俺は何も見ていないので。何も 全て分からないまま。
彼は俺の前から姿を消しました。
「一人って、意外と寂しいんですよ。
…貴方なら分かっていたでしょう。」
そう、海の響きに任せるように身を揺らした。
溢れ出る眠気と波の雑音がどこか鼻について、
俺はそこから動けませんでした。
「居るなら、返事くらいしてくださいね。…俺、かくれんぼ苦手なんで。」
小さく拗ねたような口で、ボソッ…と呟いた。
膝を抱え体育座りで、こんな長身の男が…と、フッ、と息を吐いた。
それが呆れからくるため息なのか、自嘲しているのか。
自分でもよく分からなくて。でも、答えをくれる人はもう居なくて。
なんだか虚ろを見つめている気分になった。
「……セイレーンにでもなって、帰ってこないかな、」
やっぱり、忘れたくないものは忘れられない。ありえない可能性と、
【もしかして】と期待する自分が気持ち悪かった。
けれど。それでも…気持ち悪くても。
「俺はずっと。」
忘れられない、いつまでも。
…
―
「……さて、」
そのまま数時間、夜空の下で座っていた。
雨の匂いが仄かにして、俺は雨が降る前に帰ろうと立ち上がると。
その時、南風がふく音に紛れて。茂みから葉音がした。
――「……え、」
5/10/2026, 9:25:45 AM