夢の中で誰かを見ていた。
誰を見ていたのかはわからない。
走る車の後部座席から、道に佇む、どんどん小さくなる誰かを見ていた。
夢というのは不思議なもので、すっかり忘れていたような昔の事を掘り起こす事がある。
あれは田舎の祖父だ。
祖父に叱られ、その事でふて腐れた私は、帰り際も祖父の顔も見ずに車に乗った。
一年に一度二度しか会えない孫を、精一杯もてなし遊んでくれた。
山のようなごちそうを用意し、帰りには持ちきれないほどのお土産をくれた。
子供の私が喜ぶような、おもちゃもあった。
その時私の手にあったのも、そのお土産の一つだった。
子供だった私でも、そのおもちゃはそんな態度への罪の意識を抱かせるのに十分な祖父の愛だった。
私はそんな罪の意識から、後部座席から後ろを見た。
小さくなる祖父はいつものような笑顔ではなく、申し訳なさそうな、不安げな顔をしていたように思う。
私はそのまま前を向いた。
それは子供なりの意地と、それが祖父との最期の時になる事など考えもしない無知がそうさせた。
「おじいちゃん! 大好きだよ!」
窓を開けて大きな声で、何度も何度も叫べばよかった。 声が枯れるまで。
10/21/2024, 11:38:13 AM